2010年1月14日木曜日

ミドル・エイジのパワー

日本やアメリカでは歌手や役者の中心は20代、30代である。それ以降の年齢になると、中心からはずれて懐メロか脇役に転じていく。若さや美貌に極度な価値をおく社会なのだと思う。中年以降の人々は社会の中で「見えない存在」になってしまう。

英国のテレビや映画を見ると、中年以降の人たちが中心になって活躍するのをよく目にする。50代、60代の人たちが主役になることも珍しくないし、黄色い歯やしわしわの顔をした俳優もたくさんいる。ハリウッドのように極度に人工的な美や若さを追求することもないので(美容整形は英国では繁盛しないビジネスらしい)、見ていると親近感も湧いて、「ああ、こういう人よくいるし、こういうことは自分の回りにもよくあるな」と思いながら安心して見られるよさがある。

去年、世界中でブレークした、スーザン・ボイルもその一人。英国の典型的な中年女性。スコットランドの小さな村に住んでいて、有名になるまでは多分自分の国どころかスコットランドすら出たこともなかったのだろう。彼女は歌唱力も買われたが、何よりもその容姿や彼女が歩んできた人生そのものがスターになる素地とはかけ離れていたため余計に注目された。当初は「Hairy Angel(毛深い天使)」などと揶揄された一方で、年を取っても容姿が衰えても夢はかなうことがあるという事実が多くの人の心をつかんだ。彼女のような雰囲気の人は英国にたくさん存在し、非常に身近な存在である。そういう中からダイアモンドの原石のような大物が出てくるのだろう。そして大物はいつも田舎から出る。

日本でも紅白にスーザン・ボイルが出演したと聞いたが、こちらの暮れにもBBCの1年の総括特集の中でスーザンの話題もあって、ミュージカル女優のエレイン・ペイジとスーザンが共演し歌っている姿が放映されていた。スーザンは「Britain's Got Talent」の最初のオーディションで「エレイン・ペイジのようになるのが夢」と語っていた。10ヶ月後、「夢やぶれて」でなく「夢かなった」女性は世界的なミュージカル女王と一緒に素晴らしいデュエットを披露している。
(ミュージカル「Chess」のトラック、 「I know him so well」、名曲ですね~)



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