2010年1月17日日曜日
不合理な搾取の法則
ハイチが大変なことになっている。
ハイチのことは全くの無知な私だったが、昨日の新聞でその歴史を学んで驚愕してしまった。
今のハイチはまさに植民地の歴史が作った悲劇の産物と言っても過言でない。
ハイチは西インド諸島のイスパニューラ島の西部の国、東側がスペイン領だったドミニカ共和国。ハイチには最初スペインが入植したが17世紀にはフランスが占領した。
18世紀には80万人もの奴隷を西アフリカから連れてきてプランテーションで働かせた結果、ヨーロッパ全体で消費されるコーヒーの60%、砂糖40%を生産、輸出するほどに至り、フランスにとって天井知らずの利益をもたらす最も豊かな植民地の一つになった。一方、ハイチは大西洋の奴隷貿易の3分の1を占めるほどの国になり、支配者による過酷な労働や虐待、殺人はすさまじいものだったらしい。
しかし18世紀後半に起こったフランス革命により人権意識が次第に浸透し(特に白人領主やその使用人)、奴隷たち自身がその開放に向け蜂起し、内戦状態になった。ハイチは英国の援軍も得て、結局フランスの総督は殺されフランス軍は駆逐されて、ハイチは1804年に独立を果たした。ハイチは中南米で最初に独立した国、そしてアフリカ系移民が一番多い国だそうだ。
ただし、独立後、フランスはハイチを外交的に国として認知する代わりにハイチ政府に何と賠償金(金貨で1億5千万フラン、現在の貨幣価値だと2兆円位)の支払いを求めた。ハイチは1825年から1947年までの120年以上にわたり、この独立賠償金をフランスに払い続けた。この賠償金はその後のハイチを苦しめた。賠償金の支払いのために米国、ドイツ、フランスの市中銀行から高金利で金を借りて返済し続けた。1900年までには国家予算の80%が借金の返済に当てられていたというから、経済が破綻するのは当然だ。その後も国際金融機関などからの借金のための借金は続き負債のスパイラル。
政治的にも独裁者による圧制が続き、特に1957年に就任した「パパ・ドク」は近代史の中でも最も腐敗し、弾圧した政治家として有名、その息子「ベビー・ドク」も同様だった。彼らは秘密警察を作り、反体制派の人たちおよそ6万人近くを拷問、虐殺してきた。結局、ベビー・ドクは国を追放されることになるが、9億ドル(900億円)相当の資産を持って海外に逃げた。パパ・ドクの時代は海外援助の80%が横領されていたそうなのですごいスケールの蓄財だ。
今回の地震の被害は相当なものだが、同じ島のドミニカや隣のキューバに比べると、インフラや住居がものすごく脆弱でドミニカも一部地震があったもののハイチほどの被害は見られなかったとか。長い間の経済破綻と政治崩壊により国全体で災害に耐えられる建物を建てる力がなかったことが大きな原因と言われている。
国連は震災後、フラッシュ・アピールを国際社会に出し、あちこちの国や機関が救援に入っている。各国や国際機関からの資金拠出のプレッジ額が発表されたけど、日本は5億円ほどを誓約した。オーストラリアですら9億円近く出しているのに、どうして援助大国がこんなに少ないのか?それとこのリストにフランスのプレッジ額が載っていない(後から追加されるのだろうが)。フランスは今回は何となく控えめであまり全面に出てきてない感じだ。
そもそも、フランスの強欲な収奪が原因でこの国をこんなに貧しくさせてしまったのではないか。フランスはそのことを十分認識しているので、ハイチに対して強気になれない、お得意のフランス語やフランス文化を普及させるという旧宗主国面ができないのだと思う。
だいたい、植民地に対して賠償金を払わせる国なんて聞いたことない。日本ですら、侵略したアジア諸国に対し、ODAを通して戦後賠償してきた。英国も脱植民地化後は援助を提供し続けており、旧植民地から金をむしり取るなんてことはしていない。
20世紀半ばまで賠償金に苦しめられた貧しい国に対して、フランスはハイチが払った分の金額を現在の物価に合わせてそっくりそのまま返していくべきだと思う。誰か、それを訴える人はいないのかしら。途上国の債務問題を訴えているベルギーのNGOの友達に相談して一緒に声をあげてみようかな・・・
下の写真:小さな娘を亡くして号泣している父親。何ともいたたまれない・・・
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2 件のコメント:
猫姫さま、こんばんは。
ハイチの地震は本当に痛ましいですけど、
ブログでこれまでの歴史を知って、
やりきれない気持ちになりました。
賠償金なんて、本当にフランスは一体
どういう神経をしているのか。
なぜ、隣のドミニカ共和国とこんなに
ギャップがあるのだろうと不思議に
思っていたのですが、それこそ、
誰に占領されたかという点が
大きな分かれ目になってしまったの
ですね…。
来週、年に一回の国内研修講師を
やるのですが(仏語圏アフリカ)、
今回は内乱でそれどころではない
マダガスカルがリストから落ち、
代わりにハイチが入ってきたので、
下調べをしていたところです。
でも、研修生も、それどころでは
ないだろうなぁと思います…。
小さい女の子の写真が娘に重なり、
本当に切ないです。
サヨクマさん、お返事ありがとうございます。フランスのメンタリティがよく理解できないことが時々ありますが、こういうところでもよく感じます。あれから調べたのですが、ハイチが払った150億フランというのは今の貨幣価値で2兆円位に相当するそうです(ブログ本文に追加しておきました)。尋常ではありませんんね。今からでもハイチ政府がフランスに返還要求してもいいくらいだと思います。
今後、日本の援助もしばらくはハイチ一色になるのでしょうか・・・
ほんと、あの女の子を抱いたお父さん、本当に可哀想でした・・・
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