2010年4月22日木曜日

異文化の中の自分の文化

今、フランス、ベルギーでは、イスラム女性が着用する「ブルカ」「ニカブ」(顔を全部覆うマスク)を禁止する法案が成立する過程にある。法律が制定されると、駅、病院、お店など公共の場で着用した場合、罰金、もしくは懲役が課せられる。憲法の下の宗教や表現の自由、人権との整合性で難しい問題ではあるが、欧州では治安上や女性蔑視という点で大きな議論の対象になっている。フランスでは教育宗教分離主義から、公立学校での顔は出しているベール(スカーフ)の着用までも禁止している。

欧州でベールを着用する女性がこのところ以前より多くみかけるのは確かである。
私がニカブを着た女性をはじめて見たのは、15年くらい前、英国のブライトンの町だった。乳母車を押す黒装束の女性が細いわき道から出てきて鉢合わせになり、単に見慣れてないからであるのだが、いきなりだったので私は驚き、絶叫しそうになった。

イエメンに行ったときはすべての女性がニカブを着用しているので当たり前の光景として映ったが、そうでない社会だとなかなか受け入れられないのは仕方ないと思う。たとえば、新宿のアルタの前にいきなり顔をマスクで隠した真っ黒な女性が現れたら、みんな驚くだろう。

つい先週、ガザの友人のアティマッドと女性のベールやニカブについて議論した。というのもこのあいだ、英国の大学のキャンパスでニカブを着用した女性をみかけたからだ(黒ではなくこげ茶のスカーフで顔を全部覆っていた)。学生なのかビジターなのかは知らないが、キャンパスでは今回初めて見たので、どうしてなのか知りたかった。

アティマッドはジェンダー活動家なので、「少なくとも中東やアラブ以外ではニカブは変よね、皆驚いていやがるのは無理ないと思う」と言う。彼女によると、最近、中東だけでなく欧州でもニカブ着用者が増えているとのこと。その理由として、今の社会が不安定で不確実(テロリズム、イラク、アフガン戦争、金融危機など)になっていることから女性の信仰心、神への忠誠心がさらに強くなった結果、顔を隠すことにつながっているのだそうだ。西洋人はニカブの着用を女性蔑視の象徴としてみているが、最近の女性は父や夫など男性から強要されているのでなく、自分の意思で着用しているのがほとんどだそうだ。つまり社会の制度や構造に根付いているものでなく、きわめて個人レベルの認識論理よるものらしい。なので、単に、女性の自由を奪う古い差別的慣習、と片付けられない複雑な背景があり、ジェンダー、文化、宗教の違いというのを超えた現象となっているそうである。彼女は法で禁止すると反動でもっとニカブが増える可能性があるとも指摘していた。

フランスの中道的な立場のデレボワィエ議員は部分的な禁止を提案しているが、その彼も「そうは言っても、ニカブをつけたサウジの黒装束の女性がいきなりシャンゼリゼに買い物に来たらその場はどうなるのかは本当に想像できないが・・・」と言っていた。

日本でもニカブを着用した女性が原宿あたりに現れるのもそんな遠い将来でないかもしれない。

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