2009年12月21日月曜日

「ターミナル」の住民

最近、成田空港のターミナルに、自国への入国を拒否され日本に強制送還された中国人の馮さんという男性が寝泊りしているという記事を読んだ。彼は中国の民主化、人権化に取り組んでいる活動家で、すでに8回も自国への入国を試みているがいづれも拒否されているそうだ。長いこと日本で学び、居住していたので日本政府は滞在許可証を発行すると言っているが、彼は今回はビザ放棄をして入国を拒否している。

ちょっと前にトム・ハンクス主演の「ターミナル」という映画があった。映画の設定では主人公の国がクーデターにより政権崩壊状態になり、彼の持っているパスポートが無効になって空港に住み始めるというストーリーで、馮さんの置かれた立場とはかなり違うが、ターミナルで暮らす苦労は同じである。

「ターミナル」の映画は実在のモデルに基づいて作られた。そのモデルとは、パリのシャルル・ド・ゴール空港に住んでいた、マーハン・カリミ・ナセリさんというイラン人。彼は1988年にパリからロンドンに入国しようとしたがパスポートを紛失し、パリに強制送還された。それ以来ド・ゴール空港に住んでおり、フランス政府から滞在許可を与えられたがずっと入国を拒否していた。

ナセリさんは第一ターミナルの1階の片隅にいて私も何度も見た。最初「この旅行客、何でこんなたくさんの荷物を持っているのかしら」と思ったが、2度目も3度目も同じところに同じ人が荷物に囲まれて座っているのを見てほどなく、彼がここに住んでいることがわかった。私がニコっとわらって「Hello!」というと、彼も手をあげて「Hello!」と返してくれた。「これ食べる?」とMarsバーチョコを差し出すと「Thank you!」といって受け取った。ターミナルに住む彼はこのように旅行客や空港職員の差し入れで生き延びていた。マクドナルドも時間切れになるハンバーガーを彼にあげていたらしい。
最近は彼の姿を見なくなったが、どうも病気でフランスの病院か施設に移されたらしい。20年近くも空港に住み続けた彼の今後の人生がどうなるのかちょっと気になる。

成田の馮さんもどうなっていくのか、このまま数年も成田に住み続けるのか、それとも最終的に日本、もしくは第三国に受け入れられるのか・・・ 
今後、このような難民の人たちが世界のあちこちの空港で住み始めることも珍しくなるなるのかもしれない。

写真はド・ゴール空港にいたナセリさん。

0 件のコメント: