2011年4月30日土曜日

楽園追放

昨日のロイヤル・ウェディング。
フランスのTVチャンネルしか見られない友人が、本場のBBCで見たいからと言って、朝早くから我が家に結婚式中継を見にやってきた。みんな、何だかんだと言っても好きなのよね。という私もしっかり見てしまった。
結婚式は、昨今の情勢を踏まえてのことか、ダイアナ妃の時よりはジミ婚だったような気がする。

結婚式に誰を招待するか、しないか、が結構争点になったようだ。招待客の選定は政治的な要因が影響する。
私の好きなSteve Bellという4コマ漫画の風刺作家は昨日、ガーディアン紙に上のようなイラストを掲載した。これを見て思わず噴出してしまった。

まず、左から2番目は外務大臣のウィリアム・ヘイグ氏。彼の左横にいるのは、多分サウジあたりの国王。英国から武器をタンマリ買ったのでそのご褒美に結婚式にどうぞ、と外務大臣から招待されている。

一方、彼の右横にいる三人。
まず、シリアの旗を持っている大使。デモの弾圧で、急遽、招待がキャンセルされ、残念そうな顔をして引き下がっている。
そしてその横の裸の二人。左はブレア元首相、その隣がブラウン元首相。二人とも、結婚式に招待されなかった。元首相は招待しない、というのが表立った理由だそうだが、でもメジャー元首相は招待されたそうだ。ブレア、ブラウン両氏は勲位をもっていないとか、女王から嫌われているとかいうのが本当の理由とも言われている(やっぱり皇室は保守党支持なのかな?)。なので、二人とも裸で悲しんでいるというストーリーになっている。

ちなみにブレア、ブランウンの裸の二人は、イタリアのルネッサンス画で有名なマサッチオの「楽園追放」の絵画を真似て描かれている。下が本物の絵だが、アダムが原罪を、イブが楽園から追放されたことを嘆き悲しんでいるという意味らしい。

ブレアとブラウンも国のお祭りから追放されて、嘆き悲しんでいるのだろうか?まあ別にそんなことどうでもいいと思っているかもしれない。

しかしSteve Bell の風刺漫画は本当に読者を楽しませてくれる。


2011年4月28日木曜日

奇妙な集団

エッフェル塔の近くで時々目にする集団。

この二輪車の乗り物、随分前に話題になったけど、何ていう名前だっけ? 
と忘れてしまうくらい、普及に失敗した代物といえる。
ネットで検索してやっとみつかった。
「セグウェイ」、そうそう、そんなような名前だった。
発売前は「革命的な製品」が開発され、販売される、という触れ込みでその内容すら極秘扱いだった。
蓋を開けてみたら、なんてことはなかった。

以前パリでみた「セグゥエイ集団」は全員、アメリカ人かカナダ人(北米アクセントを話す)だった。上の写真の人たちもそうなのかはわからないないが、いったいこれに乗って集団でパリを観光するのの何が楽しいのかよく理解できない。正直、こっけいにすら見える。最高時速19キロしか出ないそうで、こんなのに乗るのなら、パリのレンタル自転車(Velib)に乗る方がはるかに早いし、移動半径も広がるし、運動にもなる。

結局、ターゲット層を誤ったのと、高価格で、マーケッティングに失敗した商品と言われている。
日本では私有地内ならOKだが、公道では走れないとか。子どもの三輪車扱いのよう。商品としては完全に終わっている。北米のような大きな公道や歩道がある地域ならいいだろうが、ヨーロッパや日本など狭く入りくんだ道が多いところでは実用性がない。

ちなみに、この米国のセグウェイという会社、英国の実業家が2年くらい前に買収したが、去年、彼はこれを試乗中に誤って崖から転落して死亡したそうだ。

2011年4月27日水曜日

みんな好きよね・・・

先週、イングランドのAveburyという村で小さな教会に足を踏み入れた。
入り口に何かお知らせが貼ってあった。

何かと思いよーく見ると、ウィリアム王子とケイトさん結婚式の日に、教会の鐘が2時間半にわたり鳴ります、という通知だった。村あげてのお祝いか・・・

そのあと、バースで友人とランチ。
イギリス人は皇室に対する信奉派と冷笑派がいるが、どちらにしても今回の結婚式にはとても興味あるようだ。
でその友人から、「君も本当はロイヤルウェディング好きなんでしょ、こんなの欲しかったんじゃないの?」と言われて、なんとウィリアム・ケイト版のショートブレッド缶をくれた。

なんとも複雑な気分。私ってそんなにミーハーに見えるのかなぁ。
まあでもショートブレッドは大好きなので、有難くいただくことにした。

2011年4月14日木曜日

共存と分離の端境期

今日は前回の文化の統合に関連したお話。
今、大学にいるが、キャンパスの図書館でもついに顔全部を覆うニカブを被っている二人の女性を見た。真っ黒ではないが、こげ茶系のスカーフだった。色々な異文化に触れて、それなりに理解しているつもりの私でもさすがに英国の大学の図書館で見たニカブにはかなり違和感を覚えた。大学とは自由と開放の場と思っていたのだが、自由というのが異なって適用されているのがなんともなく不思議である。

去年、英国の街では顔を隠す「ニカブ」を被っている女性が増えていることを書いた。パレスチナの友人によると、この傾向は宗教とか男性や社会からの抑圧というより、女性の自己認識に立った個人的な理由がほとんどだそうだ。

英国ではマルチカルチャー推進という名目の下、異なる文化の人たちへの公共の場所の待遇がかなり寛容である。政治家がニカブやブルカを批判するものならメディアなどから大変な批判を受けるので、政治的に敏感なトピックでもある。これはニカブを全面禁止したフランスとは対照的である。

寛容なのはイスラム教徒に対してだけでない。
例えば、シーク教徒の男性はターバンを被っているが、彼らからの「伝統を尊重する」という強い要望で英国ではバイクに乗るときにシーク教徒は例外的にヘルメットの着用が免除されているそうだ。これをきっかけに伝統や文化を理由に、様々な公共の施設で変化が出ている。例えば、公営プールでは男性と女性の水泳時間が分けられる、イスラム女性は水着でなく、肌を出さないスェットスーツやレギンスなどを着て泳ぐ、プールのガラス張りの窓は外から見えないようにブラインドで覆うようになったので中が暗くなる、などなど。ここまで来るともうやりすぎ、という感じ。

この世には男性と女性が半分ずついるのに、そこまでして男性と距離を置く理由とはいったい何なのだろう?
一方で、図書館でニカブを被っていた女性は同じ出身地域と思われる男性と仲良くカップルのようにいちゃいちゃと歓談していた。もし公共な場では女性は男性と距離を置かなければならないのなら、これは到底、ありえない光景である。あるいは逆説的にニカブがあるから男性と接触できるというも理屈があるかもしれない。

異文化の尊重ということは理解できるのだが、それでは英国の文化というのはどういう風に捉えられているのだろう?英国人からすると、何故自分たちの側が全面的に変えなければなければならないのか、という不満が出ているそうだが、それも理解できる。

西洋人や日本人がイスラム教国に行くとその国の文化に厳格に合わせる。外国人女性はベールを被る、身体の線は見せない、外国人男性は女性との接触をできるだけ避ける、などなど。私たちの文化はそこで自動的に抹消される。逆に厳格な文化の人たちが欧米に来ると、自分たちの文化や習慣を守るため現地の文化を受け入れることは少ない。でもこうやって個々人がばらばらの価値観をもち、お互い干渉せず生きていくことが続けば、社会とてしての統一や一体感がなくなるんじゃないだろうか?ある程度の妥協点を持つ必要はあるのではないか?

社会規範に対して、寛容な文化と厳格な文化がある。
寛容な文化は厳格な文化に物差しを合わせなければならないのだろうか?もし個人の自由の尊重という国連の人権憲章が恒久的なものなら、寛容な文化の人たちの自由というのはどういう風に保障されるのだろう?

英国やフランスの経験は、多分、10年後、20年後の日本にも降りかかる問題であるような気がする。

ということを色々思いめぐらしていたら、頭が変になりそうになった。

2011年4月11日月曜日

変容する地域の遺産

日曜から渡英中。
最近、英国のコミュニティに変化が見られる。
例えば写真の建物。長い間、地域に根付く教会だった。
ところが人口の変化(減少や人種の多様化など)で、教会に通う人が減って、運営が成り立たなくなる所が増えてきた。そういった教会は閉鎖され、建物は賃貸か売却される。
この教会もそのような運命をたどった。
今は、何とインド料理のレストランになっている。
似たような現象はあちこちに見られ、教会だけでなく、伝統的なチューダ調やビクトリア調の古い民家がタイ料理屋や中華料理屋に衣替えしている。

このインド料理店の目の前にあるバングラカレーのお店のお兄さんは地元のバングラ人モスクに通っている。彼によると、街にある二軒のバングラ・モスクは両方ともキリスト教の教会を改修して作られたそうだ。

日本に例えると、村のお寺がクスクス屋やシナゴーグに変わるという感じ。
グローバル化の時代とは言え、英国固有の文化を象徴するところまで異なるカルチャーが入るこのミスマッチさを見ると、何とも複雑な気分になる。

2011年4月7日木曜日

医者いらず

"Where There is No Doctor" 「医者のいないところで」
世界80カ国以上の言語で翻訳されている、地域医療のバイブルとも言われているロングセラー本。

途上国で働く医療関係者なら誰でも一度は目にする本。病気やけがの治療のノウハウが細かく説明されている。読み書きができない人でもわかりやすいようにイラストをふんだんに使っている。

著者はディビッドー・ワーナー氏。医師でもない、高校の生物の教師。
彼自身、神経か筋肉の疾患があり、幼い頃から足に障がいを持っている。小さい時に歩行困難なため、無理やり作らされた足の補装具が合わなくて辛い思いをしたところ、自分の足に合ったものを作ってくれた技師に感動。それから、既成ではない、個々の人々に合った医療に目覚めたそうだ。

実は我が家でも「医者のいないところで」を時々使っている。
先週から私は口内炎ができて、軟膏をぬっても治らなかった。このガイドブックをあらためて読むと、塩水で口を洗浄するのが一番いい、と書いてあった。それに従ってうがいを続けたら1日で寛解した。
ちなみにネットでも調べたら、NHKの「ためしてガッテン」でも軟膏より水で洗浄するのが効果があると言っている。
Mon mari もこの間、耳の詰まりがひどくて、耳鼻科に言っても改善しなかったら、この本を読んで自分で解決していた。

あまり薬に頼らない、原始的なやり方の方が回復が早いのかもしれない。
そういう意味で、ディビッドの本はまさに家庭の中の医者いらずである。
そして医師不足で苦しんでいる震災地域でもこの本は活躍するかもしれない。

2011年4月1日金曜日

四月馬鹿


今日はエイプリル・フール。
日本は状況からしてジョークを言える場合ではないので、今年は各紙とも自粛しているだろう。

今まで一番笑ったのは、ロンドンのビッグベンの時計が、アナログからデジタルに変わるという嘘。ものごい反響を呼び、多くの抗議が寄せられた。BBCが仕組んだらしく、放送を聴いた4名が先着順で時計の針をもらえる交渉権を得られると言ったら、漁船に乗っていた日本の漁師が無線でBBCに連絡してきたとか・・・。

その他に有名なのは・・・
サルコジ大統領が身長を伸ばす手術を受けることになった
左きき用のためのバーガーキングが発売された、薬味などの位置を180度変えた
スイス農民が「スパゲティ」を収穫。今年は天気にも恵まれ、害虫も駆除されたので豊作
空飛ぶペンギンを発見

さて、今年はどんな嘘が話題を呼ぶのかしら?