2009年11月7日土曜日

性と生殖:タツノオトシゴ編

つい最近の英ガーディアン紙のサイエンス欄に、「タツノオトシゴの性生活」という記事があった。
タツノオトシゴ、英語ではSeahorse (「海馬(カイマ)」、)と呼ばれている、何となく愛くるしくて神秘的な海水魚である。
実はこのタツノオトシゴ、この地球上において、オスが妊娠、出産する唯一の生物なのだそうである。「オスが妊娠?」、いったいどんなメカニズムなのか・・・?
記事の説明によると、まずメスは産卵するのだが、その卵をオスとの交尾で渡すのだそうである。上の写真がまさに交尾の瞬間なのだが、このポジショニングが結構難しいらしく、卵を渡せるように何度も行為をやり直すそうだ。無事にメスが卵をオスに渡すとオスはお腹の中の育児嚢という袋に卵を入れて受精させて、やがてオスは出産の苦しみを経て、稚魚を産むそうだ。メスは妊娠したオスを大切にケアし、一緒にお腹の稚魚を育むらしい。

このタツノオトシゴの話を聞いて、人間もこれができればどんなに楽になるかと思った。つまり、男性も妊娠できれば、パートナー間でいつ誰が産むかの調節ができる。

例えば・・・

女:ねぇ、私課長になったからこの2-3年すごい忙しいの。とてもじゃないけど産休も育休も取れないから、悪いけど今回はあなたが妊娠してくれる?

男:ああ、いいよ。僕の方はこの数年は結構余裕があると思うし、職場も育休とれってうるさいから、そろそろ2人目作ってもいいかなって思っていたんだ。

女:ありがとう、じゃあ、今晩あなたに卵を渡すから、よろしくお願いね。

男:わかった、じゃあ、こっちのおたまじゃくしと一緒に準備しておくから、頑張って僕のお腹の中で育てていくよ・・・

なぁんてことが人間にもできればどんなにいいことか。

女性が妊娠、出産し、育児のほとんども女性の負担になっている日本の社会において、もし男女間で「妊娠・産み分け」ができたら、社会に劇的変化が訪れると思う。女性の社会進出は当たり前になるだろうし、男性自身が自分の問題として出産や育児を考えるので、子どもができても働きやすい社会を作ろうと いう機運が政治や経済活動全体に浸透し、子育ての環境やシステムがもっともっと充実するだろう。何よりも出生率が上がるのは確実である。そして出産育児にまつわる男女の格差や不平等も絶対に無くなる。

生殖補助医療は50年前はありえなかった。医学の進歩は目覚しいので、100-200年後くらいに、人間もタツノオトシゴ化して、「夫が妊娠したので、私も来年、一緒に育児休暇をいただきます」なんて言う時代が来るかもしれない。

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