2010年7月28日水曜日

ナローボートの旅 その1

英国中部、ウェールズにはたくさんの運河がある。
18世紀の産業革命後、石炭や生産に必要な様々な物資の搬送のために運河建設が進んだ。運河は狭いので、幅狭の細長い船が設計され作られた。その形から「ナローボート」と呼ばれるようになった。
その後、蒸気機関車が発明され搬送は列車に変わったので、ナローボートの役割は減り、個人商人やいわゆるジプシーと呼ばれる移動型民族(英国ではジプシーという言葉は差別用語になっていない)の移動手段と水上生活の場所になってきた。

しかし最近ではナローボートの個性的なデザインやその「スローな旅」が注目され、英国人だけでなく外国人にも高い人気を呼び、一大観光産業になっている。日本人観光客の間でも密かなブームになりつつある。上の写真は伝統的な色(緑と赤)と形のナローボート。大体はディーゼルエンジンで動くが、上の写真のように煙突のあるボートは薪や石炭でエンジンを動かしている。

私たちも先週末、ナローボートの旅を初めて経験した。
クルーは、私とMon mari、ヨットで有名なニュージーランドから来たキース、オーストラリアからのリンダの4人。キースはニュージーランドにヨットを持っており、長年、太平洋の島々を縦断するなど、船の操縦はプロ並みなのでとても頼もしかった。

私たちは5日間、上の写真の青いボートをリースした。ゆっくり移動しながら、あちこちの森林や草原のど真ん中に停泊して、一夜を過ごす。まさに Middle of Nowhere の世界。

マリーナに行くと、パブや雑貨品のお店がある。長期にボートで旅する人、実際に居住している人の多くは、寂しいのか、旅の道連れに必ず犬を伴っている。時々、猫も乗船しているのを見た。よく、あばれないで大人しくしていると、感心してしまった。

さて、ボートの操縦にはラインセンスはいらない。ほんの1-2時間の講習を受ければ誰でも操縦できる。
ということで私も頑張ってトライした。私が握っているのが舵、横にギアがありスピードを調整する。シャープな曲がり角はコントロールが難しかったが、基本的にはゆっくり走行なので私のような危ないキャップテンでも大丈夫。通り過ぎるボート同士でおしゃべりを交わしたり、ある夜には隣に停泊していたボートの人からBBQに誘われたりと、ボート仲間がとても仲良くなり結束するのがよくわかった。

キースから、操縦のコツについて色々と指導を受けた。さすが師匠はすごい。かなり難しい方向転換も容易にこなしていた。

運河に多くある橋。
夕やけの光で橋が水に反射して、輪を描いている。とても素敵な光景。
静寂の中で、歩行と同じ速度でゆっくりとボートは進む。

草原には羊、牛、馬がたくさんいる。自然と一体になるひととき。
ナローボートは俗世界を忘れさせる、不思議な空間である。

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