2009年8月25日火曜日

行列の文化

オーストラリアへ向けてパリを出国した際の話。

折りしも、夏休み真っ盛りなので当然空港もラッシュ。出国審査も写真の如くすごい行列状態。日本ならこんな風になると数人の職員が追加動員され搭乗時間に間に合わせる努力を見せるだろうが、さすが「効率」という概念が存在しないフランス。出国審査エリアから行列は溢れ出し円形のターミナルの通路を一周か二周するほどになっても、審査職員は3人のみ。フランスにいると、こういう硬直した対応にも怒ることなく慣れる、というかあきらめの境地になる。私も昔に比べ随分、我慢強くなったと思う。

列を並ぶのも、国や文化により異なる。欧米人は厳格に守り、じっとこらえる。行列の割り込みは途上国でよく体験する。日本でもたまに見かける。今回、チェックインカウンターで並んだ時、後ろにロシア人(ロシアはもう途上国ではないが)のおじさん二人がいた。その時から、私の先を越そうとしたので「あなたは私より後ろでしょ!」ときつく言ったら、「ああー、そうだった、ごめん」とわざとらしく弁明。その後、出国審査、荷物のセキュリティチェック、搭乗の場面ですべて私よりずっと後に並び始めたのに、大きな声でしゃべりながらどんどん列を割って前に進み、必ず私の後ろにぴたっとくっついて来るのだった。さすがに私を越すことはなかったが、もうここまで来ると猿飛佐助も顔負け、列割りをするおじさんたちの忍者スキルに私は脱帽してしまった。

もう一つ、これも途上国でよくあるのが、後ろに並んでいる人が、ぴたっと自分の身体にくっついてくる。身体に触れられるのが不快だから、後ろを振り返ってキッと視線を送るがあまり通じない。人との距離感がどうしてわからないのかとしばらく不思議に思っていたが、最近ようやくその理由がわかった。つまり彼らは前の人と少しでも隙間を作ると誰かに割り込みされると思い、ぴったしくっつくのだ。途上国では行列そのものがない場合が多く、人の塊の中に入りどんどん押しのけて前に進んでいかないと永遠に自分の番が回って来ない。

よく考えると、私の母もそういう傾向があった。並ぶと私の身体にぴったしくっつく。母は戦時中、食糧配給などを経験し、生存競争に勝つためにたくさんの行列に並んできた。列に隙間をあけて割り込みされると物が得られなくなる、そういう環境は貧しい国に共通するのだろう。ということで、最近はぴったしくっつかれても彼らの染み付いた習慣を理解できるようになったので、私はあえて抵抗しなくなっている。

2 件のコメント:

みゆきんたろう さんのコメント...

おじちゃんすごいですね・・・。
恐い・・・。

ホント国民性ってあるんでしょうね!!!

フェリン猫姫 さんのコメント...

こっちも怖いおばさんしてたので、向こうはちょっと萎縮してた感じです(笑)。