2011年3月1日火曜日

国際機関の存在意義

今日はちょっと真面目なお話。
世界的な景気低迷の影響を受け、英国も財政難に直面し連立保守政権は非難轟々の下、厳しい査定をして当然ながら開発援助予算も大幅に削減した。
その一環として、国連のILO(国連労働機関)とUNIDO (国連工業開発機関)、UNHABITAT (国連人間居住計画)、ISDR (国際防災戦略)のメンバーから撤退することになったそうだ。パリにあるUNESCO(国連教育科学文化機関)も撤退の対象になるかと思っていたが、今回は難を免れたそうだ。しかし2年の猶予を与え、その間にマネージメントに改善が見られない場合は撤退も視野に入れると警告を出したらしい。
そうだろうな、UNESCOのムダ遣いには目を見張るものがある。こんな物や活動に自分たちの税金が投入しているとわかったら、どこの国民も撤退を要求してもおかしくない。

英国が撤退する理由は単なる予算削減というより、国際機関の組織的な問題に起因するらしい。
最近出た、英国政府の多国間援助のレビュー報告書 (Multilateral Aid Review)はかなり包括的で詳細な評価をしている。組織の効率性や効果、拠出した金額に見合った活動をしているか (Value for Money) を厳しくチェックしている。まあ、英国1国が抜けても組織運営そのものに大きな影響はないだろうが、米国など多額に拠出している国も右にならえとばかり、見直して撤退するドナーも出てきたら大変だ。

で、報告書では上の図のような分析結果が発表された。
組織の強さと英国政府の目的への貢献、という二つの変数でValue for Moneyを測ると、確かにUNESCO、ILO、UNIDOは極めて低い位置にあり、Poor (お粗末)という分類に入っている。高い機関はGAVI(ワクチンなどを普及する機関)、ICRC(国際赤十字委員会)などである。二つとも国連ではないことと、援助活動が見えやすい、わかりやすい、即効性があるという面で共通している。

先日、UNICEFに勤める友人と話し時、彼女は「最近、国連の役割ってなんなのかと思う」とポツッと言ったのが印象的であった。中にいる人もそんな風に感じているのなら、外側の人ももっとそう感じるのかもしれない。

英国の評価は英国独自の基準で計測しているので、他のドナーにも共通するわけではない。しかしここから学べる点は、日本政府のように「まず拠出すること先にありき」という前提にたっていないことである。つまり、彼ら自身の基準に基づいて客観的に評価し、拠出の増減だけでなく存続の有無も含めて納税者に説明しようとしている。
一方、日本政府はこのような詳細分析ををして国際機関への拠出を決めているわけでない。単に前年度ベースに基づく基準か、政治的な理由(国連の安保理事会の常任理事になりたいとか)などファジーな部分だけで決められている。それと日本人というのは「情報」が入らないことに過度な不安をもつことから、メンバーから抜けることで国際社会から疎外されると思っているのかもしれない。

でも日本も相当な財政難なのだから、ODAを有効活用するのなら、英国のようにValue for Money的な感覚に沿って、国際機関への支援の大胆な見直しをする時期が来ていると思う。


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