今日立ち寄ったオリーブ・ピクルス・ショップも左の写真の通りの品揃え。オリーブといったら単に黒と緑しか知らなかった私は最初、どれを選んでいいのかわからなかったが、あれこれ買って、ようやく自分の好みがわかってきた。
で、カロリーコントロールを考えて、最近肉を薄く切るためのスライサーを買った。ドイツRitter社の家庭用スライサーである。1ミリ、2ミリも簡単おまかせ、なかなかの切れ味で大活躍。自宅でカルビ焼きや豚しゃぶサラダが満喫できるようになった。
折りしも、夏休み真っ盛りなので当然空港もラッシュ。出国審査も写真の如くすごい行列状態。日本ならこんな風になると数人の職員が追加動員され搭乗時間に間に合わせる努力を見せるだろうが、さすが「効率」という概念が存在しないフランス。出国審査エリアから行列は溢れ出し円形のターミナルの通路を一周か二周するほどになっても、審査職員は3人のみ。フランスにいると、こういう硬直した対応にも怒ることなく慣れる、というかあきらめの境地になる。私も昔に比べ随分、我慢強くなったと思う。
列を並ぶのも、国や文化により異なる。欧米人は厳格に守り、じっとこらえる。行列の割り込みは途上国でよく体験する。日本でもたまに見かける。今回、チェックインカウンターで並んだ時、後ろにロシア人(ロシアはもう途上国ではないが)のおじさん二人がいた。その時から、私の先を越そうとしたので「あなたは私より後ろでしょ!」ときつく言ったら、「ああー、そうだった、ごめん」とわざとらしく弁明。その後、出国審査、荷物のセキュリティチェック、搭乗の場面ですべて私よりずっと後に並び始めたのに、大きな声でしゃべりながらどんどん列を割って前に進み、必ず私の後ろにぴたっとくっついて来るのだった。さすがに私を越すことはなかったが、もうここまで来ると猿飛佐助も顔負け、列割りをするおじさんたちの忍者スキルに私は脱帽してしまった。
もう一つ、これも途上国でよくあるのが、後ろに並んでいる人が、ぴたっと自分の身体にくっついてくる。身体に触れられるのが不快だから、後ろを振り返ってキッと視線を送るがあまり通じない。人との距離感がどうしてわからないのかとしばらく不思議に思っていたが、最近ようやくその理由がわかった。つまり彼らは前の人と少しでも隙間を作ると誰かに割り込みされると思い、ぴったしくっつくのだ。途上国では行列そのものがない場合が多く、人の塊の中に入りどんどん押しのけて前に進んでいかないと永遠に自分の番が回って来ない。
よく考えると、私の母もそういう傾向があった。並ぶと私の身体にぴったしくっつく。母は戦時中、食糧配給などを経験し、生存競争に勝つためにたくさんの行列に並んできた。列に隙間をあけて割り込みされると物が得られなくなる、そういう環境は貧しい国に共通するのだろう。ということで、最近はぴったしくっつかれても彼らの染み付いた習慣を理解できるようになったので、私はあえて抵抗しなくなっている。
講師はマギー・カークマン先生。今回はエイジングを教えてくださったが、ご専門はリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)。実はこの先生、オーストラリアで一番最初に代理母から子どもを授かった女性である。先生ご夫妻とも不妊症で、マギー先生が40歳の時に彼女の実の妹さんが代理母となって長女を産んだ。精子はご夫妻の知人からの提供、卵子はマギー先生自身から採取、だけど子宮は妹さんから借りる、という複雑な背景があった。当時は1988年、まだ生殖補助医療(ART)や代理出産などへの理解も浅く、差別や偏見があった時代で、当然マギー先生は社会から痛烈に非難された。しかし彼女は逃げも隠れもせず社会と闘い、ARTや代理出産のあるべき姿を市民や政策立案者と徹底的に議論し、議会やメディアにも頻繁に登場し適正な対策を訴えてきた。彼女の活動貢献の結果、最近やっと国が代理出産に関する法律を制定した。オーストラリアでは、金銭の授受が発生する代理出産ビジネスを禁止し、代理母になれる人は近親者のみに限定しているそうだ。
マギー先生のお嬢さんは今年21歳、講義の最後の日に先生とお嬢さんと一緒に食事をしたが、自分の出生の事実を早い時期から教えられ育ったので、世間から注目を浴びても成長過程での混乱はなかったそうで、両親や叔母(出産した妹)とも良好な関係を築いているとのことだった。
日本も代理出産が数件報道されており、担当した産婦人科医が非難されているようだが、今回同じコースを受講した日本人の医師や看護師らによると、日本では報道されているよりもっと多くの代理出産が潜在的に行なわれているとのことだった。例えば、代理母が偽名(代理を依頼する母の名)を使い、偽名のカルテや出産証明書を使い出産しているという可能性があるらしい。話を聞いて恐ろしくなった。もしそれが本当なら、もう代理出産の倫理的是非を議論する段階でなく、存在する現実として認識し、日本もきちんと法整備をして不正な代理出産が水面下で横行しないような対策を取ることが先決と強く感じた。
写真左がマギー先生、修了証を手にしている私の右はアドミン担当のアイナさん。私は1週間、メルボルン大学のコースを受講した後、昨日からメルボルンの南西に位置するグレート・オーシャン・ロード来ている。このエリアに、私たちはまさにそのブッシュハウスを建てている。やっと外枠だけが完了。今、外側の壁のペンキ塗りをMon mariと彼の友人、私とでやっている。先週、男性二人が主な場所をやってくれて、私は窓枠など細腕が必要な、マイナーだけど高度な技術のいる部分を担当している。
右下の写真のように家の中から見ると外は牧草地帯。右の地平線上にうっすら青く見えるのが海。隣の住民は牛や羊。今日は雨でお出ましされてないが、晴れた日は数百頭が放牧される。牛の搾乳時間の移動は見事だ。数百の牛が道路を渡り、自分の納屋に向う。都会育ちの私は目にしたことのない光景で最初はすごく興奮した。
家の中はまだ壁もなくスケルトン状態。とりあえず、水と電気が通じたので、寝袋持参でCamp outしている。特殊ガラスを使っているのでかなり断熱効果はあるが、やはりここまでのガラス張りで、かつ部屋を仕切る壁がないと冬の夜は結構冷える。あと二日、壁塗りとベランダ塗りをして今回はオーストラリアを離れる。次は年末年始までに室内の壁を作ってもらい、その後、私たちの第二回目の壁のペンキ塗りが待っている。
さて、今日は随分働いたので、これから夕飯にしよう。今晩はスパゲティ・ペスカトーレかな?