2011年1月17日月曜日

退屈な人気映画

先週末、友人と久しぶりに映画を観た。
「アナザー・イヤー」という英国の映画。
私は監督のマイク・リーが好きなので、是非観たいと思っていた。
彼はユダヤ人労働者階級の家に生まれ育った。生い立ちからか、彼は社会派の映画を作り続けている。

正直言うと、ストーリーの劇的な展開もなく、退屈な映画の部類だと思う。
フランス人には絶対受けないと思いつつも、行ったら小さな劇場は観客で一杯だった。
多分、マイク・リーという監督が欧州ではとても有名だからなのだろう。
フランス人には何となくわかっても、迫力や刺激を駆り立てる物語ではない。
実際に、大きないびきをかいている客もいた。

もちろん、興行的面白みのない映画なので、単純映画が好きな米国人にも絶対に受けないだろう。
ストーリーは、地質学者とカウンセラーの夫婦宅を訪れる友人や家族の人生を描いている。それぞれの人が抱えている、人生の苦悩をゆっくりとしたリズムで表現している。彼らの悩みや問題は他人事でなく、自分自身や自分の周りにもよくあることだ。ある意味、陳腐といえば陳腐、でもとても共感する部分がある。多分、ある一定の年齢にたどりついた人(中高年)にはとても理解できる内容だと思う。

物の考え方の面で英国人は日本人に似ている所があるので、役者のそぶりや表情から、その人がどんな風に感じているのか私もとても理解できる。「あうんの呼吸」とまではいかないが、日本人は行間から雰囲気を読むのは得意だと思う。

彼の作品で好きなのは「Secret and Lies (秘密と嘘)」。これはコメディーと悲劇が混じった傑作である。
有名なのは、50年代の堕胎問題を描いた「Vera Drake (ベラ・ドレイク)」、何とも胸が詰まる物語であった。

彼の映画は、労働者階級の心温まる触れあいを描きつつ、反面残酷な人生を一貫して表現している。
私はこのマイク・リー監督のとてつもなく退屈を感じさせる、だけど人生を深く考えさせてくれる映画がとても好きだ。

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