日本でクリスマス・ケーキというと、丸いスポンジケーキに生クリームやバタークリームを塗った、いわゆる不二家風のデコレーション・ケーキである。幼いころからクリスマスケーキというものはそういうもので、また万国共通と思っていたが、ヨーロッパに住み始めてそれぞれの国ごとにケーキは違う形と味をしていることを知った。
まず、フランスのクリスマス・ケーキは「ブッシュ・ド・ノエル」と言う。ブッシュ(
bûche)とは「木」とか「丸太」というような意味。写真の如く、ケーキを丸太に見せたロールケーキ。お味はピンからキリまであるが、まあ私としては所詮ロールケーキの域から出ない代物。日本でも食べられるようなケーキ。とにかくそこらで買うフランスのケーキは見た目は美しいのだが、ものすごく甘いので、ちょっと苦手。

次に英国のクリスマス・ケーキは「クリスマス・プディング」という。フルーツケーキをブランデーで漬けて熟成させた超リッチな菓子。下の写真は一番小さいサイズだが、大きいものだと陶器に入ってコットンの布に巻かれており、蒸してからいただく。

蒸し終わったあとは、ブランデーをかけ火をつけて青い炎を楽しみ、その後たっぷりとカスタードクリームをかける。
フルーツケーキと思って軽く行けると甘く考えるととんでもない。これがものすごい重くてしつこいのである。食事をした後に、下の写真の分量を食べるのは至難の技。食べ終えた暁には、ほとんど鼻血ブー状態。とにかくイギリスのクリスマス・プディングをもてなされた際は、必ず厚さ2センチ以下に切ってもらうことにしている。

そして、次のケーキはイタリアの「パネトーネ」。一見、パンに見えるが、実際パンなのだ。レーズンやオレンジピール、ドライフルーツが入っている。しかしこの何の変哲もないパンを口にすると、なんとも言えない絶妙な舌触りと奥深い味がするのである。クリスマス・ケーキとしてはアイシング・シュガーをかけて食べる。ミラノ発祥の菓子で、「パネトーネ」とはアントニオという人が作ったパン、という意味らしい。特殊なイースト菌を使っているので、イタリア国外で手に入れて作るのはかなり難しいとか。なので日本ではパティシエは本物のパネトーネは作れないはずなので、多分輸入でしか手に入らないと思う。

これがパネトーネが入った箱。毎年、クリスマス前になるとイタリアの国内線にはこのパネトーネの箱をぶら下げて搭乗するイタリア人で一杯になる。皆、パネトーネをおみやげに「おらが村へ帰るべ」と家族の所に向う。なんとも微笑ましい光景である。

その他、ドイツもフルーツケーキのようなパンの上にアイシング・シュガーをつけた「シュトレン」というのがあるが、こちらのスーパーでみたことはあるものの、まだ食べたことはない。今度挑戦しよう。
「ブッシュ・ド・ノエル」、「クリスマス・プディング」、「パネトーネ」の中で、私はイタリアのパネトーネが一番好きである。この時期はクリスマスが始まる前から、ミニパネトーネを買ってきて、おやつにむしゃむしゃ食べている。